「みんなの笑顔が見たい、それが全て」無償の愛でゲームを支えるコミュニティという存在
2019.05.24
ゲームを支えているのは誰か?それはもちろん、ゲームをプレイするゲーマー、ゲームを作るメーカー、esportsシーンで活躍するプロゲーマー、大会の運営者……と一概には答えられないだろう。その中には、無償の愛と情熱でゲームの普及活動を行う「コミュニティ」の存在がある。彼らの活動は、「ゲームを愛する人達の笑顔が見たい」というモチベーションから生まれており、時として身銭を切ってオフラインでのイベントを展開している。
今回はKLabGamesが配信する『キャプテン翼〜たたかえドリームチーム〜』をメインにコミュニティ活動を行う「TFA(Tsubasa Football Association)」の代表Bay氏にお話を伺った。
Bay氏は、コミュニティ活動を行うかたわら、YouTuberとしても同タイトルの普及活動に専念している。彼の情熱はどこからくるのか?身を削ってまで活動する理由は?これからコミュニティ活動を行いたい、メンバーはどう集めればいいのだろう?という悩みを抱えている方にも参考になる話を伺えたので、ぜひ一読いただきたい。
ーーまずはBayさんのゲーマーとしてのバックボーンをお聞かせください。
Bay:父の仕事で小学校3年の頃から渡米しまして。現地のゲームセンターで出会った『ストリートファイターII』がゲーマーとしての始まりです。それまでは『ドラゴンクエスト』のような一人用のゲームをプレイしていたんですけど、ゲームセンターには人と対戦できるゲームがあるのかと衝撃でした。そこから深くゲームにハマっていきましたね。
ーーアメリカのゲーセン文化というのはどんな感じなのでしょう?
Bay:一昔前の日本のイメージとは違いますね。いわゆるヤンキーが溜まっているというわけではなかったです。子供も大人も入り乱れてゲームをやっている感じでした。アメリカだと25セントで1プレイなんですね。順番待ちをする人は筐体に25セントを置く。置いてれば自分の番が来る。それすら知らなかった僕は、ずっと人がプレイしているのを後ろで見て待っていたんですよ。なので全然自分の番がこなくて(笑)。
ーー日本とはまた違う文化ですね。
Bay:そうなんです。『ストII』をプレイしている内にだんだん上手くなっていって、地元では負け知らずになりまして。ある時、誰も対戦してくれなくなったんです。あいつ強いから勝負しても25セント無駄だと。そこから「もっと強い人に会いたい」って思うようになりました。
ーーまさしくリュウみたいな。
Bay:俺より強いやつに会いに行く、ですね(笑)。インターネットもない時代ですから、「遠いけどここで大会やってるよ」ってゲーセン仲間に情報もらったりしていたんです。小学生だったので、遠征するにも親に頼み込んで車で連れて行ってもらって。アメリカと日本では法律が違うので、子供でも参加費を払えば出場できたんですよ。それで優勝者には100ドル支払われる、といった形でした。esportsの起源ですよね。
ーーそこでのゲーム体験が、今のTFAやコミュニティ活動の原点なのでしょうか?
そういう活動を小学生のころからやっていたものですから、esportsという言葉がなかった時代から「esports」を肌で感じていたんです。もともと日本のものである『ストII』の大会がアメリカで行われていたり、もしくは韓国で行われていたり、そういう状況がどんどん席巻してきて、日本でもこのシーンの盛り上げに貢献したいなと。その気持がTFAを立ち上げた原点ですね。
ーーTFAのホームページを拝見しましたが、多くの方が運営に携わっていらっしゃいますね。どうやってこのメンバーは集まったのでしょう。
Bay:TFA立ち上げの前に、個人で大会を開催していたんですね。思った以上に参加者がいて。 次第に他の方々も色んな所で色んなイベントを始められてました。とても情熱を持ってやられているのを見て、 一緒にやりませんか?って話をしていくうちにメンバーが固定されていきました。
ーー情熱をもって各自でやってる方々をBayさんが見て声をかけていってメンバーが集っていった形ですね。
Bay:逆のパターンもあって、「僕も入りたい」っていう方もいらっしゃいました。メンバーがたまたまみんな社会人で「WEBデザインやってます、サイト制作やってます」、みたいにスキルを持っているんですね。僕これが出来るんでWEB作りましょう!とか僕これ出来るんで動画作ります!って各自でコミュニティの盛り上げに貢献してくれています。最終的にすごいチームができたな、と思っています。
ーーBayさんが役割分担を指示されたのではなく各々が自主的に行動されていたのですか?
Bay:もう阿吽の呼吸で。お願いをしているわけでもないのに、出来上がってるという感じでした。皆、そのゲームが本当に好きだから情熱の入れ方が違うんですよ。
ーー結束力も硬そうです。
Bay:必ずしも順風満帆ではなかったです。入ってきた方の中には、やってみたらしんどいと。「こんなのやってたらゲームが楽しめない」という方もいらっしゃいました。「ずっと居てくれ」なんて無理は言えないし、僕たちの目的としてはゲームを盛り上げて楽しむことだから、そうなると本末転倒ですよね。
だけどありがたい話、僕も含めてメンバーに「コミュニティを盛り上げたい」という方々が多かったんです。自分がゲームをガッツリやると動画が作れない、でも動画作ったほうがコミュニティが盛り上がるじゃん、と言う考えですね。そういう風に役割分担がなされていって、結束してきたという感じですね。今は「ここが足りてないよね」という状況になったら、都度メンバーを募集する形を取っています。
ーー中野レッドブルでオフラインイベントも開催されました。
Bay:昨年の12月ですね。他の方と併催だったので大体のキャパが100人の会場に、100人以上来てくれました。先程「情熱」という言葉がでましたが、この大会で感動したことがあるんです。僕、YouTubeで英語でもゲーム実況をしているのですが、大会の告知を自分のチャンネルで行ったんです。それをフランスの方が見てくれて、「3人で行きます」ってメッセージが来て。いやいや、ただのコミュニティイベントで賞金も出ないし大したものじゃないって、確認したんですよ。でも、「旅行がてら行くよ」って本当に3人できてくれたんです。
ーーゲームが国境を超えた瞬間を目の当たりにしたと。
フランスからも驚きでしたけど、北は北海道、南は沖縄、全国各地から集まりました。これは絶対後悔させられないなと。急遽、来場者同士で交流ができるようにタッグを組んで遊ぶ、といったルールに変更したり、土壇場で工夫しました。フランスの方がちゃんと交流できるか心配だったのですが、日本の方も一生懸命に英語で一緒にプレイしていました。みんな同じゲームが好きなメンバーですから、もう言葉の壁を超えたというか。そういう感じはありましたね。
ーーこのイベントは、参加費が無料だったと聞いています。事前準備から会場の手配など非常にコストもかかり赤字ですよね。Bayさんはどういった思いでこの活動を続けられているのですか?
Bay:確かに赤字ですし、「利益ないのになんでやってるんですか?」とはよく聞かれるんですけど(笑)、これに関しては、一つの目的は僕がesportsをやりたいから。これはもう投資だって言う考え方。もう一つはみんなで交流できるのは楽しいっていうのが単純にあって。大きいことを言いますが、コミュニティの存続がゲームの存続にも繋がると思うんです。一日でも長く、僕達がゲームを楽しめるのであれば、それが利益だよねと。ゴルフや飲み会に行く分をゲームに費やしたというだけの話ですね。
ーーみんなの笑顔が見たいから、みたいな。
Bay:ほんと、そうですね。そこが全てです。
ーーオンラインのイベントは月2回のペースでやられていていますが、その中で気をつけている点などありますか?
Bay:TFAがもっとも気をつけているのは、僕らが主役じゃない、ということですね。主役は参加者。それは絶対ブレたくないところです。大会を盛り上げるのももちろんですが、大会が終わったらそこで終わりにしない。TFA公式サイトで優勝者インタビューを掲載したり、ツイッターとかでちょっと誇れるものお土産にしてあげたい。そうすることで「あの人TFAで優勝した人じゃない?」ってコミュニケーションが生まれますよね、「次は俺も優勝したい!」って。
あとは、イベントの告知動画も作るのですが、これも力をいれています。過去の大会の優勝者の名前を動画に掲載するだけでなく、参加者全員の名前を掲載するんです。こういった参加者とのコミュニケーションを重ね、イベントは形作られていますね。
ーーコミュニティ運営で苦しい面だったりとか大変だなというところは?
Bay:運営メンバーが大勢いるので、その分意見が割れるんですよね。たとえば、前回の大会の反省点を活かして、次回の大会はこういう企画はどうか?って話をするんですけど、そうすると他の運営メンバーの中には、「そうするとこういう批判も出ませんか?」と。100人全員に好かれるっていうのは難しい。そういうことが理由で、メンバーが「運営に一時的に距離をおきます」ということもありました。
あとは僕が言うと変なのですが、TFAが大きくなればなるほど、影響力も出てくるんです。一言一言の発言が重くなる。「アイツこの前こんなことやってたけど、それってTFAがやってることと反しない?」となるんですね。ですので、日頃の行いも気をつけましょう、大会外であっても変な言動しちゃうとTFAってそういう団体なんだって見られてしまうので、気をつけようという話をしています。そういうので結構メンバーで意見を交わしますね。
ーーその他のコミュニティにもアドバイスをされてるそうですが、どういった相談が多いですか?
Bay:「どうやったら集客できるか」、「配信環境がない」、「お金がない」、こういったところが多いですね。運営のトップの方はスタッフをその場で雇うんですけど、ちょっとはお支払いをしたい、という話があって。コミュニティイベントでは利益は出ませんから、どうすればいいですか?と。
お金の部分に関してはTFAの事例でしか話せないんですけど、情熱でみんな好きでやってるはずだから、そういうパートナーを探すべきだと伝えています。「この日だけ手伝いに来てください」って、企業がアルバイト雇うみたいな感覚で接するべきではない。もしかしたら僕はラッキーでたまたまそういう人が集まっただけかもしれません。それ以外に物理的な機材が足りないとか告知しても人が来ないという部分に関しては、今TFAで成功してる事例をもってWEBサイトを作るのを手伝ってあげたり、告知のポスター作ってあげたり、そういうのはしてます。
ーーそこもBayさんの情熱からくる行動でしょうか?
自分もやってきて分かるんですけど、イベント運営って大変ですから。集客できなかったら心が折れて、活動が続かなくなっちゃう。それって悲しいですよね。こういった支援は今後も続けて行きたいと思います。
ーー今後のTFAの目指す世界を教えてください
オフラインイベントの頻度をもっと増やしたいです。月1くらいでやりたいし、本当のゴールは「水曜日はTFAの日」みたいな感じで、仕事帰りに寄れるような環境を提供できたらいいなと。あとは、全国でも開催したいですね。「大阪でやってくれ、名古屋でやってくれ、北海道でやってくれ」っていうのを本当に聞くんですよ。やるからには絶対に成功させたいので、会場の下見を入念にしないといけないですし、そうなると二の足を踏んでしまう部分もあるのですが、いつか実現したい。
あとは、例えばTFAで活躍した参加者がトップのesportsシーンに行ける、みたいな流れがつくれるといいですよね。こういう風に「自分のコミュニティからプロが輩出できた!」って、ある意味一つのゴールだと思うし運営を続けるモチベーションになりますから。そうすると「俺もプロになれるかも」とコミュニティへの参加者が増えて、ゲームが活性化される。いつかはそういったリンクも生まれたら、と思います。
ーー最後に、「esportsを肌で感じていた」というBayさんから見た、今のesportsシーンについて感じるところがあれば教えてください。
Bay:急速に育っていって、凄いなの一言です。外野の僕がこう言うのは恐縮なんですけど、皆さんの努力でこんなに素晴らしいものになったんだと感銘を受けますし、まだまだ成長していくんだろうなと感じていますし、esportsってすでに日本だけで収まるようなものじゃないと思うんですよね。その後押しに、コミュニティとして関わっていければと思いますし、発展していくことに僕も貢献していきたいなと思います。
ーーありがとうございました。
第2回目となる「オフライン大会TFAフェス2」が、2019年3月にRedbull Gaming Sphere Tokyoで開催された。
50名を超える多くのプレイヤーが集まり大会は大いに盛り上がった。
この大会はBayのTwitchだけではなく、Nothingxs氏のTwitchでも英語で世界中の翼ファンに配信された。
当日はたたかえドリームチーム最大のガチャイベントの日だったこともあり、来場者が並んでTwitchのライブ配信と会場9面モニターで順番にガチャを引く、みんなでガチャ大会も行われ大変な盛り上がりを見せた。
他にも、ガチャの後には事前にTFA運営でいつも大会告知動画や画像を制作してくれている悪魔将軍さんが用意していた「このゲームがこうだったら?」というテーマのプレゼンテーションを見ながら、ユーザー視点でこうだったら面白い!もっと楽しめる!といった話し合いを行ったとのこと。
このようにみんなで同じ空間で熱を共有できるのも、オフライン大会ならではの魅力だと感じた。
※記事のイベントレポートの部分は、TFA公式ブログ(https://www.esports-tfa.com/articles/)から提供いただいています。