『グランツーリスモSPORT』「e-Motorsports 都道府県対抗 U18 全日本選手権」&「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」をレポート|自社の看板を賭けて戦った男たちの本気
2019.10.30
現実のレースの緊張感を手軽に楽しむことができるPS4用ソフトウェア『グランツーリスモSPORT』。本作を用いた“e-Motorsports”では、ゲームを楽しんでいるプレイヤーたちが実際のレーシングドライバーのように、FIA(国際自動車連盟)公認のオンライン選手権で戦っている。
先日まで開催された「東京モーターショー2019」では、“e-Motorsports Stage”が設けられており、会場では選手たちの活躍を見届けようと多くのファンが詰めかけた。
本稿では2019年10月27日(日)に行われた3大会の内、「e-Motorsports 都道府県対抗 U18 全日本選手権」と「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」の模様をお届けする。
ストイックに自らの立ち回りを振り返る水野選手
「e-Motorsports 都道府県対抗 U18 全日本選手権」は、18歳以下のドライバーを対象とした大会。最前列に設けられた選手席の後方では、選手たちの父兄が彼らの活躍を見守っていた。
本大会の出場選手たちは、予選大会を制したドライバーや、直前に行われたセミファイナルを勝ち上がったハイレベルなドライバーばかり。
総合司会に加え、元レーシングドライバーの土屋圭市が解説を務めるなど、ゲーム『グランツーリスモ』のファンにとどまらず、レーシングファンも必見の大会になっていた。
試合に移る前に、FIA GTチャンピオンシップ 2018 ワールドファイナルネイションズカップの初代チャンピオンである、ブラジルのイゴール・フラガ。そして『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサーである山内一典による対談が行われた。
この試みでイゴール選手と『グランツーリスモ』との出会いや、その人生を時代と共に掘り下げたところでいよいよ大会スタートとなった。
決勝レース出場選手は以下の通り。※U18の選手名紹介部分です。
【出場選手】
福島県:鈴木聖弥
福岡県:龍翔太郎
広島県:橋本蕗維斗
千葉県:中村仁
愛知県:水野航希
富山県:市井智也
東京都:佐々木唯人
宮崎県:後藤李駆
神奈川県:角間光起
茨城県A:箕輪卓也
埼玉県:嶋田吉輝
高知県:南海飛翔
選手たちが本大会で戦うコースは、富士スピードウェイ。ポイントは1.5kmのホームストレートと、最終区間のテクニカルセクションとなる。周回数は10で、レーシングハードとミディアム、2種類のタイヤを必ず使わなければならない。
レースではタイヤの摩耗要素も絡んでくるので、グリップ力がハードタイヤよりも強いミディアムタイヤを如何に長く使えるのかが重要になる。これは、後半になると徐々にグリップダウンを起こし、タイムが落ちてくるからだそうだ。
どのドライバーも巧みなテクニックでコースを駆け抜ける技術を持っているだけに、こういった細かい部分が勝負の結果に如実に影響をもたらしていたのがU18の大会。
鈴木選手を先頭に全車一斉に走り出すと、1コーナー目で中村選手が飛び出した。しかしアウトに膨らんでいったため、鈴木選手がトップをキープ。
開幕からハードタイヤを選択し、唯一5位以内をキープしていたのが龍選手。ミディアムタイヤを選んだ選手たちよりグリップ力の劣るタイヤを序盤から用いることで、後半に勝負を賭ける形だ。そのためか序盤からは積極的には仕掛けないものの、トップグループの後ろにピッタリ付ける立ち回りが印象的だった。
2週目のトップ争いで橋本選手がアウトから鈴木選手を抜き去ろうとしかけたところ、なんと橋本選手が鈴木選手に対して幅寄せする形で膨らんでしまい、1秒のペナルティが科せられた。
これによって1位には躍り出たものの、橋本選手はストレートに戻ってきたところでペナルティにより失速。その隙をついてトップに躍り出たのが水野選手。
その後ろでハードタイヤスタート勢が続々ピットでミディアムタイヤに履き替えるなか、トップ勢につけていた龍選手はそのまま4週目に突入。巧みにタイヤの摩耗を制御して、4週を終えたところでミディアムタイヤにチェンジした。
龍選手はタイヤ交換後も6位を維持しており、まだトップを狙える位置をキープ。他の選手は今後タイヤ交換があるため、後半に追い上げが期待できる状況に。レース後半に入るとその戦略が功を奏し、龍選手はトップの水野選手の真後ろに付けることとなった。
残すところ後2週というところで、水野選手と龍選手の熾烈なバトルに。じりじりと差を縮めつつ果敢に攻めていく龍選手に対し、守りに回る水野選手。1位と2位が目まぐるしく入れ替わりつつ最終ラップへ。
水野選手と龍選手のワンツーフィニッシュで決まりかと思われたが、レース後半のコーナーで龍選手が前に出たところ、水野選手のマシンの頭が龍選手のマシンの後部に接触。龍選手がスピンしてしまい、そのまま脱落。
1位水野選手、2位箕輪選手、3位佐々木選手の順で決着となった。龍選手は7位と残念な結果に。接触ということで審議がありましたが、水野選手にはペナルティが科せられず。優勝は水野選手という結果に。
7位に終わってしまった龍選手も素晴らしい走りだったので、実況席からは称賛する声が聞こえていた。
優勝者インタビューで水野選手は龍選手をスピンさせてしまったと発言しており、勝利しながらもまだ自分の立ち回りを振り返る様子を見せた。水野選手は、まだまだ速くなるだろう。
有名自動車メーカーたちが社の看板を背負い鈴鹿サーキットを駆ける
続いては実在する日本と一部海外の自動車メーカーによる「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」。こちらの大会はチーム戦となっており、自社の社員、プロのレーシングドライバー、『グランツーリスモ』のプロドライバーの3名1組でチームが構成される。
ゲームの大会とは言え各社の看板を背負って戦うだけあってか、どのチームも意地でも負けられない様相。なお、本大会には以下の10のメーカーが参加し、競い合った。
【参加自動車メーカー】
ダイハツ
ホンダ
スバル
三菱
スズキ
トヨタ
ルノー
マツダ
メルセデスベンツ
日産
トヨタは自社の社員でもあり国体出場経験のある長和樹と、GTドライバーの山中智瑛、ふたりの強豪ドライバーを要していた。そこにレーシングドライバーの阪口晴南を加えているということで、盤石の布陣。昨年ファイナルラップで悔しい思いをしたと試合前に語っており、今年こそその雪辱を果たすという強い意志が感じられた。
また、昨年王者のマツダは今年も優勝して連覇を目指したいとコメント。日産チームにはレーシングドライバーの平手晃平が名を連ねており、解説席に座っている土屋は、しきりに「晃平は手ごわい」と呟いていた。
今回のレースで用いられるコースは鈴鹿サーキット。レーシングハード、ミディアム、ソフトすべてのタイヤに交換する必要があり、その際にドライバーを交代。ひとり最低3週はしなければならないので、3人の内誰がどのタイヤを使い何週するのか、この部分の戦略が重要。
どのチームも最初のドライバーを殆ど自社の社員が担当。過半数がハードタイヤを採用しており、レースがスタートすると全車入り乱れた混沌の様相。そんな状況でダイハツと日産がコースアウトという波乱の展開で幕を開けると、トップに躍り出たのはスバル。その後ろをホンダ、トヨタが追いかけるという形。
1週目にホンダを抜き去り2位になったトヨタは、そのまま順調にコーナーを攻めるスバルを捕まえようと間合いを詰めていた。3位~6位に目を向けてみると、次から次へとポジションの入れ替わりが激しさを増していた。いち早くこの集団を抜けてスバルとトヨタのトップ争いに参加したい、その焦りがあったのだろう。
その頃スバルとトヨタは、コーナーを曲がるごとに1位と2位が目まぐるしく入れ替わっていた。そうしてトップに立ったトヨタは、長選手がそのままタイヤを交換することなく粘りに粘り、他社のドライバーとの差を広げていった。
リードが広がっていき、3人目のドライバーに代わるまででもはやトヨタの独走状態。1位は動かないだろうという状況のなか、最後まで熱い戦いを見せてくれたのが3位~8位までの下位争い。
下位とは言ってもその差は殆ど無いと言って差し支えなく、残りひとつの表彰台を争ってドライバーたちの勝利への執念はもちろん、車体同士も激しくぶつかり合った。ダイハツにはイゴール・フラガが参加していたが、最後まで諦めていない様子。
続いてマツダと日産の3位争い。日産がピッタリとマツダの後ろに付ける形で進行しており、14週目を回ったところで日産がマツダの前に躍り出た。これによってほぼ順位が決定。
自動車メーカー対抗戦は、1位トヨタ、2位スバル、3位日産という結果で幕を閉じた。トヨタはこの結果に大いに喜んでいたほか、スバルの新井大輝からは「世界選手権より緊張した」なんて言葉も。
表彰式では選手たちに記念の盾が贈られ、3位の日産から順番にインタビューを実施。最下位からのスタートだった日産は3位という結果を喜んだほか、スバルは実際の車を用いたレースとの違いはあるものの、チームで3人で走ることがいい経験となったとコメント。
最後にトヨタが、お互いに無線で会話を交わしながら穏やかな雰囲気で走っていたことを明かしてくれた。
大きな盛り上がりを見せた“e-Motorsports”『グランツーリスモSPORT』。現在実際にプレイするのが楽しいのはもちろんのことだが、実際にレース場に行くことなく手軽に観戦を楽しめる点も見逃せない。
大会の模様は公式YouTubeチャンネルで配信されているので、興味を持った方は一度動画で観戦してみてはいかがだろうか。
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