eスポーツプレイヤーが優秀である3つの理由
2023.09.28
参考記事:https://esports-world.jp/news/10041
大企業5社が共同で設立したGame Wellness Project (ゲーム ウェルネス プロジェクト)。このプロジェクトの実験により、プロ選手は”プレイ前に比べ、プレイ中にLow-β(注意・集中)とhigh-α(ゾーン・フロー)が高いポイントになり”、”ゲームをプレイすることによりリラックスしつつも注意・集中も高められているという傾向が見られ”ることが分かりました。ゾーン・フローとは、「ゾーンに入る」といったように使われる、極度に集中した精神状態のことです。
こちらのプロジェクトからは、実験データに基づいた客観的な事実のみが発表されておりますが、本稿では、1人のeスポーツプレイヤーとしての主観も交えながら、eスポーツの持つ能力開発の可能性について掘り下げていきたいと思います。
eスポーツが強い人は、そのプレイタイトルに関わらず、皆が「超」がつくほど優秀です。もしかしたら計算は遅いかもしれません、歴史上の人物を全く覚えていないかもしれません。しかしながら、3つの点で超優秀なのです。
1つ目は、「網羅的に調べ尽くす」という点においてです。例えば、現在eスポーツタイトルとして多く扱われている「バトルロイヤル」という形式。100人前後のプレイヤーが広大なマップの中で武器や防具を調達しながら戦い最後の1人(1チーム)を目指すというゲーム形式なのですが、覚えるべき事項がとてつもなく多いのです。広大なマップの地形に始まり、遮蔽物や各建物の構造、武器の種類や性能、弾の種類、各アタッチメントが対応する武器やその効果、そしてそれらが落ちている場所、自チームの戦術やライバルとなるチームの戦術まで・・・。これらを、ゲームをプレイしつつ研究して、全て暗記します。もちろん、プレイ中に、テストで歴史上の人物を答える時のように「えーっと・・・」なんて考えている暇はありませんので、これらの知識は、反射的に取り出せるものにまで昇華させていなければなりません。
2つ目は、「PDCAを驚異的なスピードと正確さで回し続けることができる」という点においてです。例えば、ゲームのプレイ中に敵に撃たれて死んでしまったとしましょう。その時に、「弾があっちから飛んできたということは、敵はあのあたりにいたのか。となると、自分はあの時あっちを見てなければいけなくて、そのためには・・・」といった具合に、徹底的に敗因を掘り下げ、対策を練ります。しかも、具体的なシチュエーション(ゲーム内マップの特定の位置や、特定の敵の配置等)において考えた対策を、すぐに抽象化して、別のシチュエーションにも対応できるようになるのです。このPDCAを、ゲームをプレイする度、ひいては、敵を撃つ度・撃たれる度に回し続けるため、必然的に、eスポーツプレイヤーの問題解決能力は高くなります。
このように、eスポーツプレイヤーは、「勝つ」という目的のために必要な知識を網羅的に蓄え、高頻度・高精度でPDCAを回しているため、優秀な方が多い傾向にあります。
この優秀さに拍車をかけるのが、3つ目のポイント。冒頭で紹介したプロジェクト内でも触れられている、集中力・注意力・リラックス力です。
eスポーツは、究極のマルチタスクです。現在の自分の位置や装備等を認識し、相手の位置や装備を推測し、足音に細心の注意を払いながら索敵し、ミリ単位で照準を定めて発砲。文字で書くと簡単そうに見えるのですが、いざやってみると、頭がパンクします。初心者は自分のキャラクターを動かすことで精一杯になってしまい、敵を発見しても、ビックリして照準がブレてしまいます。緊張する場面においてもリラックスできて、極度の集中をしながら冷静にマルチタスクをこなす人材が即ち、強いeスポーツプレイヤーなのです。
このように見てみると、eスポーツ選手の能力の素晴らしさを感じていただけたのではないでしょうか。また、同時に、eスポーツが秘める能力開発の可能性についてもお伝えできておりましたら、幸いでございます。