report レポート

シニアeスポーツによる多世代交流が、歴史を繋ぐ

2024.02.08

シニアeスポーツによる多世代交流が、歴史を繋ぐ

 eスポーツ・ゲームは、それ自体が脳の働きを活性化させると言われております。素早い動きに対応するための動体視力、複数の情報を同時に処理しながら適格な操作をするというマルチタスクをこなす能力、コントローラー・キーマウの操作で指や体を動かすこと、等々、頭をフル回転させる要素が盛りだくさんです。更に、eスポーツ・ゲームをするためにコミュニティに所属することで、人との関わりが生まれます。これによって、認知機能の改善が見込まれております。

 

 更に、若者との交流時にかつての思い出を語ることがあれば、それもまた、認知機能の改善に大きく貢献します。過去の記憶を思い出す際に、脳の血流が促進されるためです。「かつての思い出」と一口に言っても、個人的な身の上話から、日本における歴史的な出来事まで、幅広くあります。

 

▲新潟県新発田市で行なわれたシニア向けeスポーツイベント。指導は地元の大学生が行なった。(https://www.nsttv.com/news/news.php?day=20230704-00000019-NST-1 より引用)

 

シニアeスポーツへの取り組みでは、80代後半の方のご参加が散見されますが、例えば、1931年生まれで現在92歳の方は、

10歳 太平洋戦争開戦

14歳 太平洋戦争終戦

24歳 高度経済成長期が始まる

33歳 東京オリンピック開催

42歳 オイルショック

58歳 元号が平成に

60歳 バブル崩壊

67歳 長野オリンピック開催

(以降省略)

という激動の人生を歩んだ、数々の歴史的な出来事の証人です。こんな時代の話を、eスポーツ・ゲームをしながら「昔はね・・・」なんて語りだしてくれたら、そんなに楽しいことはありません。

 私たち若者が歴史の教科書でしか見ることのない数々の出来事を、その身で体感し、その時代の空気を吸って生きてきた方々。彼/彼女の体験談は、若者にとって、そして日本にとって、受け継いでいかなければいけないものです。戦争を経験し、戦後の日本を復興し、現在の日本を作ってきた張本人のお話しを、思春期に聞いて育つ。そのエネルギーを感じながら思春期を過ごす。そうしてこのような歴史が受け継がれていくことは、日本にとって重要なことのような気がします。

 

 

 近年、「コミュニティで子どもを育てる」という文化が薄れてしまいました。また、核家族化が進み、祖父母世代との交流も減ってきています。かつての子どもは、両親や祖父母、そして地域の大人の背中を見て、知らず知らずのうちに「大人というもの」を学んでいました。

 家族やコミュニティであれば、同じ時間を過ごすのに理由はいりません。しかしながら、現代において、血の繋がっていない、近くに住んでいる訳でもない他人と、世代を超えて同じ時間を過ごすには、よほどの理由が必要です。

 eスポーツが、共通の話題として架け橋となり、若者とお年寄りの世代間交流が生まれ、若者は支え、お年寄りは受け継ぐ。そんな情景もまた、eスポーツが見せてくれる夢の一つです。

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