eスポーツはオリンピック種目に採用される?IOCの動きからその可能性を探る
2024.08.22
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近年、eスポーツの人気の高まりとともに、オリンピック種目への検討が加速してきました。
世界的な大会イベントが数多く行われ、プレイヤーやファンが確実に増えているeスポーツ。スポーツジャンルの一つとしての認識が広まりつつある中、オリンピック種目として採用されるのか気になっている方も多いでしょう。
ここでは、eスポーツを取り巻く状況をチェックしながら、オリンピック種目に採用される可能性を見ていきます。なお本記事後半では代表的なeスポーツ種目も紹介します。
目次
eスポーツはオリンピック種目に採用されるのか
世界的に人気が高まっているeスポーツですが、従来のオリンピック種目とは違って電子機器を使った競技であり、ゲーム内の暴力的なシーンがあることなどから種目への採用に慎重な立場の人もいます。
さまざまな意見が飛び交う中、オリンピックを主催する国際オリンピック委員会(以下、IOC)はどのように考えているのでしょうか。近年のIOCの動きをチェックしながら、eスポーツがオリンピック種目に採用される可能性を見ていきます。
IOCは2023年6月に世界的なバーチャル&シミュレーションスポーツ競技大会「オリンピックeスポーツシリーズ(OES)」を開催しました。世界中のトッププレイヤーによるハイレベルな決勝戦に世界中が注目。スポーツとゲームの一体感が味わえる世界的な大会の開催に、IOCは確かな手応えを感じているようでした。
また2023年10月14日に開催された第141回IOC総会の開会式で、バッハ会長は「eスポーツ委員会にオリンピックeスポーツ競技大会の創設について検討するよう依頼した」と発言しました。
そして2024年7月、IOCは「オリンピックeスポーツゲームズ(Olympic Esports Games, OEG)」の開催を正式に決定。第1回大会は2025年にサウジアラビアで行われます。IOCとサウジアラビアの契約期間は12年で、夏季・冬季オリンピックが開催されない奇数年に開催する方向性とされています。
石油依存から脱却し、多角的な産業体制を目指すサウジアラビア。2024年には「Esports World Cup」を開催するなど、国を挙げてゲーム産業の成長を後押ししています。
eスポーツ大国を目指すサウジアラビアでの大会開催を皮切りに「オリンピックeスポーツゲームズ」として独自のブランドを確立するのか、オリンピックの正式種目として採用に向けた動きを進めるのか、今後のIOCの動向に注目が集まります。
参考:IOC「オリンピックeスポーツ競技大会の創設をIOCが検討/トーマス・バッハIOC会長」
オリンピック競技への採用が検討されている理由
近年、「若者はスポーツ観戦をしない」とも言われています。
笹川スポーツ財団が実施した調査によると、2011年に青少年(12歳から19歳まで)のスポーツ観戦率は46.7%でしたが、2019年には38.3%にまで低下。さらに2021年には18.6%にまで落ち込みました。特に女子のスポーツ観戦離れは深刻で、2021年の男子の観戦率が24.0%なのに対し、女子の観戦率は13.7%にとどまります。
参考:笹川スポーツ財団「青少年の直接スポーツ観戦率の変化 -進むスポーツ観戦離れと拡大する男女差-」
IOCも若者のスポーツ観戦離れ、オリンピック離れを懸念しています。そこで、オリンピック離れの救世主として、若者に人気が高いeスポーツに着目。オリンピック競技に採用することで、若い人たちにもスポーツやオリンピックに関心をもってもらいたいという意図が感じられます。
IOCが主催したeスポーツ大会をチェック!
IOCはこれまでにeスポーツ大会を2回主催しています。
1回目は、2021年5月13日から6月23日まで開催された「オリンピック・バーチャルシリーズ(OVS)」です。同大会では野球、自転車競技、ボート競技、セーリング、モータースポーツの5種目を実施。
ボート競技は特定のゲームタイトルは採用されず、同大会の公式サイトでローイングワークアウト登録後に、自宅やジムのローイングマシンまたは水上から自由に参加できるスタイルでした。
ボート競技以外も観客参加型のイベントであることが優先され、自転車競技ではバーチャルな旅を楽しみながら真剣勝負の戦いに参戦できるなど、見て応援するだけではない、新しい楽しみ方を実現した大会となりました。
2回目は2023年6月23日から6月25日までシンガポール・サンテック国際展示場で行われた「オリンピックeスポーツシリーズ(OES)2023」のファイナルです。同大会では、アーチェリー、サイクリング、射撃、セーリング、ダンス、チェス、テコンドー、テニス、モータースポーツ、野球の10種目を実施。世界中から集結した実力者による白熱したバトルが巨大スクリーンに映し出され、シンガポールにかけつけた多くのファンを興奮の渦に包み込みました。
国際的なeスポーツ大会で注目されている種目とは
国際的なeスポーツ大会には、IOCが開催した2大会だけでなく、ゲーム会社が主催しているプロリーグや、ゲーム内からも参加可能な予選大会を突破したプレイヤーが参戦できる大会など数多くあります。
ここでは、国際的なeスポーツ大会で注目されているeスポーツの種目と代表的なゲームを紹介します。
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FPS
FPS (ファーストパーソンシューティング)はシューティングゲームの一種で、操作するキャラクターの視点で銃の撃ち合いが楽しめます。キャラクター目線でゲームの世界観が体感できるので、迫力と臨場感があります!
多くの競技大会では攻撃側防御側の2チームに分かれて戦う、分かりやすいルールを採用しています。チームの戦略やプレイヤースキル、どのキャラクターを採用するのかなどによって多種多様な展開が生まれるため、毎回新たな発見や学びがあり、何度プレイしても飽きずに楽しめることでしょう。
国際的な大規模eスポーツ大会では、戦略的な5対5タクティカルシューターで、各キャラクターの特殊能力を活かして戦う「VALORANT(ヴァロラント)」などが採用されています。
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格闘ゲーム
格闘ゲームは、1プレイヤーがゲーム内のキャラクターを操作して、1対1で対戦。相手キャラクターのライフゲージを0にするために、さまざまな技や駆け引きを駆使して闘います。高度なテクニックと戦略によって繰り広げられるスピード感のある激しい展開に、多くのプレイヤーが魅了されていることでしょう。
「オリンピックeスポーツシリーズ(OES)」では、エキシビションマッチに「ストリートファイター6 」を採用。世界のトップ選手が熱戦を繰り広げました。
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MOBA
MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)は、RTSから派生して誕生しました。
RTSが1人で複数のキャラクターを操作するのに対し、MOBAは複数のプレイヤーがチームを組んで戦いに挑みます。1プレイヤーが操作できるのは1キャラクターだけ。チーム内での協力・連携が勝利の鍵を握ります。
刻一刻と変わる戦況に応じて柔軟な対応が求められ、高レベルの戦略性が必要になります。一筋縄ではいかない、奥深い戦いにどっぷりハマる人も多いことでしょう。
人気タイトルには「リーグ・オブ・レジェンド」や「Dota2」などがあります。
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パズルゲーム
パズルゲームは「考えて解く」パズルの要素をメインにしたゲームです。ルールが簡単なので、子どもから大人までみんなで楽しむことができます。
しかし、そのシンプルなゲーム性の中にある奥深さこそが、パズルゲームの最大の魅力と言えるでしょう。
一見単純に見えるパズルゲームですが、その中には様々な戦略が詰まっています。複数のパズルを同時に消したり、連続して消したりすることでゲームを有利に進められるため、テクニックだけではなく先の展開を読む力も求められます。
頭脳と戦略を駆使したパズルゲームは毎回異なるゲーム展開となり、何度プレイしても新たな気付きを得られることでしょう。
eスポーツでは公式大会が全国で行われている「ぷよぷよeスポーツ」や、パズルとRPGの2つの要素がマッチした「パズル&ドラゴンズ」などが採用されています。
DCG
DCG(デジタルカードゲーム)もeスポーツの人気種目の一つです。現実世界では「ポケモンカード」や「遊戯王」などのカードゲームが人気なので、「リアルのカードゲームが楽しいから、DCGにもチャレンジしたい!」という人もいるでしょう。
リアルのカードゲームとの大きな違いは、プレイヤー同士が直接対面しなくてもオンラインで試合ができる点です。対戦相手を見つけやすく、世界中のプレイヤーと国を越えたバトルを楽しめるしょう。
また、DCGには豪華声優陣がキャラクターを演じるフルボイスのストーリーモードや、世界中のプレイヤーと熱いバトルを繰り広げながらカートゲームの頂点を目指せるランクマッチなど、さまざまな楽しみ方があり、一人でもやり込める要素満載です。
人気タイトルには基本プレイが無料の「ハースストーン」や、知名度の高い「シャドウバース」などがあります。
スポーツゲーム
スポーツゲームは、実在するリアルスポーツをゲーム上で再現しています。多くのスポーツゲームは現実世界のスポーツと同じルールで行われるので、該当のスポーツを経験したことがある人は取り組みやすいかもしれません。
リアルで活躍している選手がゲーム内に登場するタイトルもあります。自分の理想を実現した夢のチームを作ったり、選手育成を楽しんだり。一定のレベルに達すると現役選手を獲得できるイベントや、現役プロ野球選手同士の対戦のYouTube配信など、リアルスポーツと関連したさまざまな取り組みも行われています。
IOC主催の大会では、テニス「Tennis Clash」や野球「WBSC eBASEBALLパワフルプロ野球」などが採用されました。
RTS
RTS(リアルタイムストラテジー)では、1人で複数のキャラクターを操作しながら敵拠点の破壊などを目指します。自チームの全キャラクターをリアルタイムで操作するため、状況を瞬時に判断する力が求められます。
絶えず変化する戦況を俯瞰的に把握し、即座に対処しなければならないため、他のゲームにはないスピード感のある駆け引きや臨機応変な立ち回りなどが楽しめるでしょう。
代表タイトルには、繊細なグラフィックの宇宙空間で戦闘を繰り広げる「StarCraft Ⅱ(スタークラフト2)」や、2003年にリリースされ世界中でプレイされている「Warcraft III(ウォークラフト3)」などがあります。
TPS
TPS(サードパーソンシューティング)は、上記で紹介したFPSと同様、シューティングゲームの一種です。操作キャラクターが画面に映し出される点がFPSと異なり、FPSよりも周囲の状況を把握しやすいと感じる人もいるでしょう。
IOC主催の「オリンピックeスポーツシリーズ(OES)」では、定期的に大会を開催し、ファンが多い「Fortnite(フォートナイト)」を射撃種目に採用。「オリンピックeスポーツシリーズ(OES)」では、スポーツ射撃競技を行うためにデザインされた特別な島で、射撃手としての照準の精度などが競われました。
また、「Fortnite(フォートナイト)」には、自分が理想とする島やゲーム作りまで実現できる「クリエイティブモード」と更に開発ツールとしての自由度を拡張する「UEFN(Unreal Editor for Fortnite)」があるので、自分が作ったコンテンツで世界中のプレイヤーに遊んでもらえるのも魅力です。
まとめ
年齢や性別、国籍などを問わずに楽しめるeスポーツは、若者を中心に多くの人から支持を集めています。市場規模も年々拡大を続けており、若者からの支持を得たいIOCが注目するのも納得です。
近年、IOCはeスポーツの国際大会の開催や「eスポーツ委員会」の設置など、eスポーツに対する積極的な取り組みを進めています。
「オリンピックeスポーツゲームズ(OEG)」の新設も賛成多数で決定され、これがeスポーツの将来にとって重要な試みとなることが期待されています。今後のIOCの動向にさらなる注目が集まることでしょう。
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