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ゲームは面白いだけじゃない!新しい視点で見るeスポーツ

2024.10.03

ゲームは面白いだけじゃない!新しい視点で見るeスポーツ

eスポーツは国籍を問わず若者を中心に人気のコンテンツとして知られていますが、近年はそれまでの「楽しさ」にプラスして、「地域活性」「地域貢献」などのキーワードと絡めて注目される機会が増えています。今回はさまざまな分野で活用されているeスポーツが秘める可能性や、その特性についてご紹介します。

 

目次

eスポーツが社会にもたらす影響

 ハンディキャップを超えて楽しめるコンテンツ

 eスポーツは高齢者の健康維持にも

 eスポーツで人それぞれに「夢中になれること」を作れる

eスポーツはもはや「楽しい」だけでない

 多様性を後押しする競技

 どんな人も対等に楽しめる稀有な競技

 医学会と連携した取り組みも

eスポーツの広がりで予想される未来

 健康維持やリハビリへの活用

 さまざまな価値観に触れる機会の増加

 eスポーツが社会貢献に

まとめ

 

 

 

eスポーツが社会にもたらす影響

 

eスポーツというとプロゲーマーによる競技シーンが注目されがちですが、実はeスポーツはさまざまなことに活用され、社会的な課題の解決のために役立てられるケースも増えています。

 

eスポーツはフィジカルスポーツと異なり、年齢や性別、また心身のハンディキャップなどを問わず楽しみやすい特徴があることから、多様性が求められる昨今において「人と人」をつなぐために注目されています。

 

ハンディキャップを超えて楽しめるコンテンツ

eスポーツではマウス&キーボードやコントローラーなどのデバイスを使って操作するため、身体に障害を持っている人でもプレイできる可能性があります。フィジカルスポーツでは障害の有無や重度等で競技クラスが分かれていますが、eスポーツでは障害を持つ方だけを対象としたeスポーツ大会はあるものの、一般参加型のeスポーツ大会と同じルールが採用されることが多くあります。※ハンデ、特別ルールを設けている大会もあり

 

使用する機器やゲームソフト側にも配慮されたものが登場しています。代表的なものとしては「ストリートファイター6」が挙げられます。このタイトルではサウンドアクセシビリティ機能を導入して、視覚に障害のある方が音によってプレイを楽しめるようになっています。

 

その他、ハンディキャップに対応した機能は多くあり、ゲームソフト内にて色覚特性に応じた色に変更できる機能や、先に述べたように音だけでゲームの状況が分かるような機能が搭載されているものが増えてきています。また、四肢に麻痺症状があり手足や指を自由に動かせないなどの障害を持つ方に向け、口での操作が可能なものや大きなボタンを搭載し押しやすくなっているものなどの工夫をこらした機器を製造する企業も見られ、eスポーツにかかわる業界全体で包括的に楽しめる環境づくりが進んでいます。

 

eスポーツは高齢者の健康維持にも

若者のものと思われがちなeスポーツですが、最近では高齢者がプレイする例も増えてきています。手指を使うことで認知症の防止に繋がることが期待されているほか、複数人で行うタイトルの場合、他者とのコミュニケーションが生まれるため、コミュニティの創出にも役立つといわれています。実際に高齢者施設などで取り入れられている例も増えてきていて、高齢者限定のeスポーツ大会も開催されています。過去には、参加資格が60歳以上と条件を設け、オンラインで国内15地域から参加者を募ったeスポーツの全国大会「LEGEND CUP-OVER60 ESPORTS-」が開催された事例もあります。

 

eスポーツで人それぞれに「夢中になれること」を作れる

eスポーツは年齢やハンディキャップの有無に関係なく楽しめるという点で、フィジカルスポーツと大きく異なります。

 

eスポーツは、インターネット回線やゲーム機器などの環境面が整えば誰でもプレイでき、それぞれのハンディキャップに合わせて操作機器の工夫もできることから、体質や年齢的に激しい運動ができないという人でも、大きなハンデを負うことなく同じ土俵で楽しめる可能性を秘めています。そのため、フィジカル面を気にしすぎることなく楽しめるでしょう。また、自分がお気に入りのタイトルをじっくりプレイし、力をつけていくことで「夢中になれるものを見つけられる」「『できる』が増えた」といった、生きがいにつながる可能性も秘めています。

 

 

eスポーツはもはや「楽しい」だけでない

 

ここまで紹介したように、eスポーツは社会課題の解決に役立てられるケースも増えてきています。eスポーツはもはや「楽しい」だけの存在ではありません。ここからはさらに、eスポーツの可能性や社会的な影響を見ていきましょう。

 

多様性を後押しする競技

多様性が求められる現代において、eスポーツには国籍や性別、ハンディキャップを問わず楽しめ、かつ研鑽をつめる特徴があります。最もプレイヤーが多いeスポーツタイトル『League of Legends』の人口は1億人以上といわれ、世界中で楽しまれています。

 

『League of Legends』は5人のチームで行われる競技ですが、選手たちは国際大会で活躍しているほか、チーム内に外国人選手がいる場合もあり、国籍や人種が関係ないことが分かります。実際に、海外のプレイヤーと日常的にプレイしている人もおり、eスポーツは凄く身近な国際交流ともいえるでしょう。

 

どんな人も対等に楽しめる稀有な競技

eスポーツは子どもや若者だけでなく、大人も、さらには高齢者も楽しめる可能性を秘めています。

 

たとえば、フィジカルスポーツの場合、体重や年齢などさまざまな属性で選手が区分されることが一般的ですが、eスポーツはこうした区分が比較的少なく、幅広いプレイヤーとも一緒に楽しむことができる可能性があります。

 

また、オンラインで世界とつながることができるため、異なる文化やバックグラウンドを持つ人々との交流が生まれる場としても機能しています。こうした点で、eスポーツは多様性を体現する競技であり、年齢や体力に左右されることなく、誰もが対等に楽しめる稀有な存在といえるでしょう。

 

医学会と連携した取り組みも

eスポーツは医学の分野でも活用されているのをご存知でしょうか。指先や身体を動かしたり、新しいことに挑戦したりすることで認知症の改善が期待されています。

 

医学会と連係してeスポーツを高齢者施設に導入する支援を行っている団体もあり、リズムゲームやボウリングのゲームを使ったeスポーツの大会も開かれています。また、「シニアeスポーツ協会」では、一般社団法人国際eスポーツ医学会と連携して、eスポーツが認知症や脳機能への有用性があるかを究明し、シニア層へのeスポーツ導入が進められています。今後の医療分野での活用にも注目したいですね。

 

 

eスポーツの広がりで予想される未来

 

eスポーツはゲーム・娯楽という枠を超えて、さまざまな分野で活用されています。ハードルが高く見えることや取っ掛かりが難しいことでも、eスポーツを通すことで気軽に踏み込みやすくなるでしょう。

 

健康維持やリハビリへの活用

認知症の改善効果も期待されていると紹介したeスポーツですが、中にはフィジカルスポーツを模したような身体を動かすものもあり、eスポーツの「楽しみ」と「体を動かすこと」を活かし、健康維持やリハビリといった面でも応用することも可能でしょう。

 

リハビリというと、「退屈なもの」「辛いもの」とハードルが高いものに感じてしまうような人でも、eスポーツを通すことで積極的に取り組む例もあり、医療や介護の現場でも役立てられている事例があります。リハビリの選択肢としてeスポーツを用いることが一般的になることも十分にあり得る未来ではないでしょうか。 また、eスポーツの場合は「競う」という観点もあることから楽しむことはもちろん「できるところまでやってみよう」と自分の力を試すきっかけにもなり得ます。

 

さまざまな価値観に触れる機会の増加

eスポーツは、世代や性別、国籍などを超えた交流を日常的に可能にします。「eスポーツを楽しむ」といった共通点を通じて多様な価値観に触れたり、これまでとは異なるコミュニティとつながるきっかけを得ることができるでしょう。

 

ゲームといえば「家でひとりで楽しむもの」と考える人も少なくありませんが、eスポーツは自宅や専用施設にいながらも、世界中と人々とつながり、異なる文化や考え方に触れることができる貴重な存在なのです。

 

eスポーツが社会貢献に

eスポーツは大規模な設備や広大な土地を必要とせず、オンライン上で皆とつながり楽しむことができます。そのため、どこでも参加できるeスポーツの特徴を活かして地方でイベントを開催したり交流のきっかけを作ったりする際に役立てられています。

 

実際に地方自治体の中にはeスポーツに関連する部署があり、積極的に大会やイベントを行っているところも。プレイヤーや観戦者を呼び込むことで、大会自体が盛り上がるほか、地域の観光にも繋がることが期待されています。

 

自治体の魅力が高まると、若者のUターンやIターンのきっかけにもなり、人口減少や地方の弱体化改善の兆しにもなるかもしれません。

 

また、eスポーツを活用した就労支援事業、英会話、プログラミング教室、放課後デイサービスなども登場しています。仕事に就くのが難しい人が、eスポーツに関連するクリエイティブ作業や企業の広報活動のサポートなどを通して職業訓練をしたり、学校に通うのが難しい子どもがeスポーツを使ってコミュニケーションができるデイサービスに通ったりすることで、社会復帰を目指す手助けをしています。

 

 

まとめ

 

eスポーツは老若男女や場所を問わず楽しめるという特性から、娯楽や競技としてだけでなく、医療や経済、そして教育など、多岐にわたり活用されるようになりました。多様性が求められている昨今、ここまでそれらに即したコンテンツというものもなかなかないのではないでしょうか。

 

eスポーツの市場規模は拡大傾向にあります。さまざまな企業が参入してきており、その取り組みの幅を広げています。たとえば、有名企業がスポンサーとして参加する、自らでプロチームを運営する、円滑な大会運営をサポートするなど。このような企業活動を通じて、eスポーツの認知度は今後もますます高まることでしょう。そうなると、よりeスポーツを活かしたコンテンツやサービスが生まれてくるかもしれません。

 

「楽しい」が「さまざまな価値観や人を知り、自身を豊かにする」という可能性をeスポーツは秘めているといえるでしょう。

 

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