eスポーツと依存症
2024.01.02
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皆様は、eスポーツには依存症があると思いますか?
私の考えは、「No」です。
もう少し詳細に言えば、「ゲーム依存症、ゲーム障がいというものはあるが、eスポーツには依存症はない」という考えです。
本記事では、ゲーム依存症について、その症状や原因を深堀りしながら、ゲームとeスポーツの違いについて解説していきます!
■ゲーム依存症とは?
2022年から適用されたWHO(世界保健機関)による国際疾病分類の最新版「ICD-11」では、ゲーム依存症が「ゲーム障害」の病名で依存症分野に加わり、その臨床的特徴は、「ゲームのコントロールができない」、「他の日常生活よりゲームを優先する」、「問題が起きてもゲームを続ける」、等としています。これにより、WHOの定義上は、ゲームも、様々な嗜好品と同じように、依存性が認められるものとされました。
■ゲーム依存症の種類
ゲーム依存と一口に言っても、その依存先(抜け出させないこと)は大きく3種類存在します。
①ゲームそのもの
②アイテム等への課金
③ゲーム内のコミュニティ
■ゲームそのものへの依存
ゲームそのものへの依存にもタイプは2種類あり、それは、「惰性」と「執着」です。「惰性」とは、そのゲームを心から楽しんでいる訳ではないのにも関わらず、何となくゲームを続けてしまっている状態で、「執着」とは、今までゲームに投資してきた時間やお金、そしてその結晶である実力やアカウントに固執してしまい、ゲームをやめること自体に恐怖に似た感情を覚え、ゲームに執着してしまっている状態です。「惰性」も「執着」も、ゲームに費やす様々なリソースを新たにつぎ込む先、つまり、新たな趣味などを見つけることにより改善されますが、自分1人の力でこれを成し遂げるのはなかなかに難しいことです。
■アイテム等への課金に執着してしまう
アイテム等への課金への依存は、前述の「執着」との複合要因になります。
いわゆる「ソシャゲ」と呼ばれるジャンルのゲームには、課金によって強いキャラクターや武器等が手に入り、ゲームの勝敗がそれらのキャラクターや武器等に依存してしまうものが多いです(eスポーツではそのようなことはなく、実力のみによって勝敗が分かれます)。一度「もう少し強くなりたいな」と課金をして実際に強くなると、その快感が忘れられず課金を繰り返し、やがて、「こんなにお金をかけたんだし」という執着が生まれ、課金に依存をしてしまいます。こちらも「ゲームそのものへの依存」同様、新たなお金の遣い道を見つける等の解決策があるものの、脱することは容易ではありません。
■コミュニティへの依存
3つ目が、ゲームをあまりしない人にとっては直感的に理解しにくいと思います。ソシャゲやRPG、CPUと対戦する格闘ゲーム・パズルゲーム等は、1人でプレイするものです。対して、チーム戦のタイトルやMMORPG(※1)等、プレイをするためにコミュニティに所属するゲームが存在します。例え自分がゲームにあまり気乗りしない時であっても、仲間からの誘いがあると「迷惑をかけられないから」とやむなくゲームをしてしまうのです。特にMMORPGにおいては、1日ごとに個人がこなすべきタスクが割り当てられていることもあり、それを怠るとチームメイトから酷く責められてしまうことすらあります。
例えば、学校で5人組の仲良しグループがあり、グループのリーダーが「カラオケ行こうぜ」と言い出したら、例え自分はカラオケに行きたくなくても、「行かなかったら、今後仲間外れにされてしまうかもしれない」「陰で何か言われてしまうかもしれない」と、リスクを避ける理由から、カラオケに行かざるを得なくなる。
そんな感覚と近いかもしれません。
疎外されたくない、孤独になりたくない。
そんな思いが、コミュニティへの参加を駆り立てます。
端から見れば「やめてしまえばいいじゃないか」と思いがちですが、現実世界においてあるコミュニティから抜けるのが容易ではないように、そう簡単にはいきません。
ただ、一方で、ここまでも熱中する、現実社会よりもはるかに満足度の高い「社会」がゲーム上に存在しているということでもあります。
※1 MMORPG
「Massively Multiplayer Online Role-Playing Game」の略で、「大規模多人数同時参加型オンラインRPG」のこと。オンラインゲームの一種で、コンピューターRPGをモチーフとしたものを指す。通常のRPGでは、プレイヤーがプレイをしている時だけゲーム内時間が流れ、プレイをしていないときはゲーム内時間が止まっているが、MMORPGの場合、ゲーム内時間は現実世界と同じように絶えず流れ続けており、例え何か失敗をしてしまっても「前のセーブデータからやり直す」ということができない。1人1人のキャラクターは全て人間が操作しており、ゲーム内で盛んにコミュニケーションがとられるため、「ゲームの中にもう1つの生活が生まれる」と表現されることもある。
■ゲーム依存症の症状
これら3つの依存が、「コントロールができない」、「他の日常生活よりゲームを優先する」、「問題が起きてもゲームを続ける」という段階に達すると、ゲーム依存となってしまうのです。
依存後の症状には、以下のもの挙げられます。
(「MIRA-i」ホームページ 「ネットゲーム依存とは」より引用 https://mira-i.jp/addiction/)
風邪のように「この薬を飲めば治る」というものではなく、精神的な要因が大きいため、その治療には、強い意志と、周囲や専門家のサポートが必要なゲーム依存症。今後、eスポーツがますます脚光を浴びていくにつれて、その依存への議論や対策の必要性は増していきます。ただし、ここで注意すべきは、依存症等、負の側面ばかりが取り上げられ、eスポーツのイメージそのものが暗い方向に向かっていかないようにしなければならないということです。ゲームも、その他の嗜好品と同じように、大多数の人が適度に接している中で、一部、その調節が自分の力だけでは難しくなってしまう場合があるだけです。
■eスポーツには依存症はない
ネットゲーム依存からの回復支援をしている「MIRA-i」はeスポーツ選手との契約をしておりますが、これは、ネット・ゲーム依存症の予防や回復を支援する「MIRA-i」が、eスポーツ自体を肯定しつつも、野球選手が肘や肩の怪我に注意しながらプレイしていくように、eスポーツに寄り添いながら依存症に向き合っていくという姿勢の表われです。IQ、コミュニケーション能力、情報収集能力、判断力、PDCAサイクルの回し方等、様々な能力を開発してくれるeスポーツ。他のスポーツと同じように、大きなプラスを享受するためには、適切な関わり方をする必要があるというだけなのです。
そもそも「eスポーツ(eSports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、電子機器を介して2人以上で競う対人競技であり、偶然性や課金による優遇等を完全に排除し、統一された競技ルールとスポーツマンシップの下、知力・体力・チームワークを最大限に活かしてアスリート同士が競い合うスポーツ種目です。
野球やサッカーの依存症がないのと同じように、eスポーツ依存症はない、というのが筆者の考えです。
「ゲーム依存症」と「eスポーツへの依存」を一続きに考える方が多いと感じ、本記事を寄稿させていただきました。
eスポーツ関連企業による正しいeスポーツとの向き合い方の啓蒙等、この問題の解決には、ある種ボランティア的な取り組みが必要不可欠かと思います。ただ、最も重要なのは、プレイヤーの近くにいる人々、特に大人が、ゲーム・eスポーツについての正しい認識を持ってプレイヤーに手を差し伸べてあげることです。一概にゲーム・eスポーツを否定するのではなく、適切な動機付けをし、適切な遊び方を教えながら、寄り添って共に歩める距離で見守ってあげることで、ゲーム依存症そのものも防げる可能性があるのではないでしょうか。
以上、あくまでも、一人のライターの私見でございました。
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